国立大学法人千葉大学
千葉大学大学院医学薬学府4年博士課程の松本揚 氏及び同大予防医学センターの花里真道 准教授らの研究チームは、国内23市町の27,346人の高齢者を2013年から約3年間追跡した結果、「運動や散歩に適した公園や歩道」が多い地域に住む高齢者は少ない地域に住む者と比べて転倒しにくいこと、また、「坂や段差など歩行が困難な場所」が中程度にある地域に住む高齢者は、少ない地域に住む者に比べて転倒しにくいことも明らかとなりました。これらは、地域の環境整備が転倒予防につながる可能性を示す重要な知見です。
本研究成果は、2026年4月22日にArchives of Gerontology and Geriatricsで公開されました。
(論文はこちら: 10.1016/j.archger.2026.106258)

図:本研究における検証結果:縦軸の「転倒リスク比」は、横軸の左端を1とした際に、他項目がどの程度転倒しやすいかを表す数値。また、*は今回のような結果が、偶然に観察される確率が5%未満であったことを示す。
■研究の背景
転倒は高齢者の死亡や長期ケアが必要となる原因であり、世界的に重大な公衆衛生上の課題です。既存の研究は欧米が中心であり、アジアにおける研究成果は非常に少ない状況でした。また、地域の環境が転倒の原因になるのか、転倒したことで外出頻度が減り環境への評価が変わるのかという時間的順序を考慮した追跡研究による検討も不十分でした。そのため本研究では、高齢化が急速に進む日本の大規模データを用いて、環境要因と高齢者の3年後の転倒リスクを検証しました。
■研究成果のポイント(詳細はPDF参照)
2010年~2016年にわたる縦断研究(注1)を、日本老年学的評価研究機構(JAGES)のデータを用いて実施しました。
● 「運動や散歩に適した公園や歩道」が多い地域に住む高齢者は、そうした環境が少ない地域と比べて転倒の相対リスクが11%低かった。
● 「坂や段差など歩くのが大変な場所」が中程度ある地域に住む高齢者は、そうした環境が少ない地域と比べて転倒の相対リスクが6%低かった。
● 歩行に適した環境が身体活動を促進し、日常的に中程度の起伏を昇降することが筋力増強と維持につながった可能性がある。
■今後の展望
転倒予防はこれまで運動教室への参加など、個人のトレーニングが中心でしたが、本研究は「どのような環境の街に住むか」という環境整備の視点からも転倒を予防できる可能性を示しています。今後は、公園や歩道の整備といったまちづくりの取り組みが実際の転倒予防に効果をもたらすかどうかの検証、および転倒場所(屋内と屋外)の特定による分析を進める予定です。高齢化が進む日本において、誰もが安心して歩ける街づくりという環境への介入(ゼロ次予防(注2))を通じた転倒予防の実現を目指します。
■用語解説
注1)縦断研究:同じ人を長期間追跡する研究手法。本研究では地域環境への影響と転倒発生の時間的前後関係を明らかにするために用い、時間的な前後関係を検証した。
注2)ゼロ次予防:健康や保健指導など個人の行動を変えるのではなく、環境や社会の条件そのものを変えるアプローチのこと。
■論文情報
タイトル:Neighborhood environmental characteristics and the risk of falls among older adults: A 3-year longitudinal follow-up of the Japan gerontological evaluation Study
著者:Yo Matsumoto, Yu-Ru Chen, Yoko Matsuoka, Kazuki Matsumoto, Hiroaki Yoshida, Katsunori Kondo, Masamichi Hanazato
雑誌名:Archives of Gerontology and Geriatrics
DOI: 10.1016/j.archger.2026.106258
■研究プロジェクトについて
本研究は、以下の助成を受けて実施されました。関係各機関に深く感謝申し上げます。
●科学研究費助成事業科研費(19K02200、20H00557、20H03954、20K02176、20K10540、20K13721、20K19534、21H00792、21H03196、21K02001、21K10323、21K11108、21K17302、21K17308、21K17322、22H00934、22H03299、22J00662、22J01409、22K01434、22K04450、22K10564、22K11101、22K13558、22K17265、22K17364、22K17409、23K16320、23H00449、23H03117、23K16349、23K19793、23K21500、23K19796、25K01387)
●厚生労働科学研究費補助金19FA1012、19FA2001、21FA1012、22FA2001、22FA1010、22FG2001)
●国立長寿医療研究センター長寿科学研究開発費(21-20)
●科学技術振興機構社会技術研究開発センター(JPMJOP1831)
●公益財団法人健康・体力づくり事業財団令和 4 年度健康運動指導研究助成
●新潟大学十日町いきいきエイジング講座寄附金, TMDU 重点研究領域
●国立研究開発法人防災科学技術研究所 など
詳細はこちら
d15177-1200-19d097b1634e4755a425fda0e63a9a00.pdf
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千葉大学大学院医学薬学府4年博士課程の松本揚 氏及び同大予防医学センターの花里真道 准教授らの研究チームは、国内23市町の27,346人の高齢者を2013年から約3年間追跡した結果、「運動や散歩に適した公園や歩道」が多い地域に住む高齢者は少ない地域に住む者と比べて転倒しにくいこと、また、「坂や段差など歩行が困難な場所」が中程度にある地域に住む高齢者は、少ない地域に住む者に比べて転倒しにくいことも明らかとなりました。これらは、地域の環境整備が転倒予防につながる可能性を示す重要な知見です。
本研究成果は、2026年4月22日にArchives of Gerontology and Geriatricsで公開されました。
(論文はこちら: 10.1016/j.archger.2026.106258)

図:本研究における検証結果:縦軸の「転倒リスク比」は、横軸の左端を1とした際に、他項目がどの程度転倒しやすいかを表す数値。また、*は今回のような結果が、偶然に観察される確率が5%未満であったことを示す。
■研究の背景
転倒は高齢者の死亡や長期ケアが必要となる原因であり、世界的に重大な公衆衛生上の課題です。既存の研究は欧米が中心であり、アジアにおける研究成果は非常に少ない状況でした。また、地域の環境が転倒の原因になるのか、転倒したことで外出頻度が減り環境への評価が変わるのかという時間的順序を考慮した追跡研究による検討も不十分でした。そのため本研究では、高齢化が急速に進む日本の大規模データを用いて、環境要因と高齢者の3年後の転倒リスクを検証しました。
■研究成果のポイント(詳細はPDF参照)
2010年~2016年にわたる縦断研究(注1)を、日本老年学的評価研究機構(JAGES)のデータを用いて実施しました。
● 「運動や散歩に適した公園や歩道」が多い地域に住む高齢者は、そうした環境が少ない地域と比べて転倒の相対リスクが11%低かった。
● 「坂や段差など歩くのが大変な場所」が中程度ある地域に住む高齢者は、そうした環境が少ない地域と比べて転倒の相対リスクが6%低かった。
● 歩行に適した環境が身体活動を促進し、日常的に中程度の起伏を昇降することが筋力増強と維持につながった可能性がある。
■今後の展望
転倒予防はこれまで運動教室への参加など、個人のトレーニングが中心でしたが、本研究は「どのような環境の街に住むか」という環境整備の視点からも転倒を予防できる可能性を示しています。今後は、公園や歩道の整備といったまちづくりの取り組みが実際の転倒予防に効果をもたらすかどうかの検証、および転倒場所(屋内と屋外)の特定による分析を進める予定です。高齢化が進む日本において、誰もが安心して歩ける街づくりという環境への介入(ゼロ次予防(注2))を通じた転倒予防の実現を目指します。
■用語解説
注1)縦断研究:同じ人を長期間追跡する研究手法。本研究では地域環境への影響と転倒発生の時間的前後関係を明らかにするために用い、時間的な前後関係を検証した。
注2)ゼロ次予防:健康や保健指導など個人の行動を変えるのではなく、環境や社会の条件そのものを変えるアプローチのこと。
■論文情報
タイトル:Neighborhood environmental characteristics and the risk of falls among older adults: A 3-year longitudinal follow-up of the Japan gerontological evaluation Study
著者:Yo Matsumoto, Yu-Ru Chen, Yoko Matsuoka, Kazuki Matsumoto, Hiroaki Yoshida, Katsunori Kondo, Masamichi Hanazato
雑誌名:Archives of Gerontology and Geriatrics
DOI: 10.1016/j.archger.2026.106258
■研究プロジェクトについて
本研究は、以下の助成を受けて実施されました。関係各機関に深く感謝申し上げます。
●科学研究費助成事業科研費(19K02200、20H00557、20H03954、20K02176、20K10540、20K13721、20K19534、21H00792、21H03196、21K02001、21K10323、21K11108、21K17302、21K17308、21K17322、22H00934、22H03299、22J00662、22J01409、22K01434、22K04450、22K10564、22K11101、22K13558、22K17265、22K17364、22K17409、23K16320、23H00449、23H03117、23K16349、23K19793、23K21500、23K19796、25K01387)
●厚生労働科学研究費補助金19FA1012、19FA2001、21FA1012、22FA2001、22FA1010、22FG2001)
●国立長寿医療研究センター長寿科学研究開発費(21-20)
●科学技術振興機構社会技術研究開発センター(JPMJOP1831)
●公益財団法人健康・体力づくり事業財団令和 4 年度健康運動指導研究助成
●新潟大学十日町いきいきエイジング講座寄附金, TMDU 重点研究領域
●国立研究開発法人防災科学技術研究所 など
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