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6G時代に向け、サブテラヘルツ波を利用した車両通信システムの高速大容量伝送に成功

    –実走行車両に対し1.7Gbit/s、300m超の5G標準仕様準拠無線伝送を実証–

    2026年6月26日
    京都大学 原田博司研究室

    国立大学法人京都大学大学院情報学研究科の原田博司教授、香田優介准教授らの研究グループは、サブテラヘルツ帯(100 GHz帯)において、交差点から約300 m長にわたる車線上を実際に走行する車両に対し、5G標準化で定められている通信仕様に準拠しながら、国内の5Gに割り当てられている最大チャネル帯域幅(400MHz)の2倍以上(920MHz)を用いた高速無線伝送(伝送レート:1.7 Gbit/s)に成功しました。実際に走行する車両へのデータ伝送において、5G標準化仕様に準拠した通信方式を用いながら、サブテラヘルツ帯の電波を用いて高速・大容量伝送を実証したのは世界初の成果です。今回の成果により、交差点周辺で生成される点群データや高精度3次元地図情報など、自動運転車両向け大容量認識情報を移動通信環境下で高速に伝送することが可能となります。これにより、より安全な自動運転・自動交通社会の実現に向けた超高速無線通信インフラの研究開発が加速するものと期待されます。

     

    1. 背景

    商用サービスが開始されている第5世代移動通信システム(5G)は、「高速・大容量」「低遅延」「多接続」を特長とし、個人向け通信サービスのみならず産業や社会基盤を支える重要な情報通信インフラとして、さらなる高度化が期待されています。なかでも自動運転分野においては、車両向け通信システムV2X(Vehicle-to-Everything)が注目されており、5Gの活用が検討されています。V2Xでは、車両同士あるいは車両と路側インフラとの間で、位置情報、各種センサー、メーター、モニターの情報を共有することで、交通事故の削減等交通分野におけるさまざまな課題解決に貢献することが期待されています。日本では、このようなV2Xの実現に向けて5.9 GHz帯の利用が検討されているほか、28 GHz帯に代表されるミリ波帯2を用いた研究開発も進められています。一方で、自動運転車両に搭載されるカメラやLiDARなどのセンサーは高性能化・高精細化が進んでおり、取り扱うデータ量は今後さらに増大すると予想されています。こうした大容量データを瞬時に伝送し、安心・安全な自動運転システムを実現するためには、より広い周波数帯域の確保が急務になっています。その有力候補として注目されているのが、100–300 GHzのサブテラヘルツ波です。サブテラヘルツ波は、現在の5Gで利用可能なチャネル帯域幅を大幅に上回る広帯域が確保できるため、高精細映像や高精度3次元地図データなどの大容量情報を高速に伝送する超高速無線通信技術として期待されています。

     

    京都大学では、交差点の俯瞰映像や点群データ、高精度3次元地図など、自動運転車両の認識に必要な大容量データを高速に伝送することで、安全・安心な自動運転社会の実現を目指したサブテラヘルツ波V2X通信システムの研究開発を進めてきました。2025年7月には、5G標準仕様に準拠しながら、国内の5Gに割り当てられている最大チャネル帯域幅(400MHz)の2倍を超える920MHzを用いた6G向け広帯域移動伝送試験装置を開発し、移動体に対する基礎伝送試験において伝送レート:1.7 Gbit/sを達成しました。しかし、これまでは低速で移動する台車を用いた基礎実験にとどまっており、サブテラヘルツ波V2X通信システムの実利用を想定した、実際に走行する車両との通信実証は行われていませんでした。

     

    2. 研究成果

    交差点を含む実道路環境において伝送試験を実施し、交差点から延びる直線330 m長の車線上で、20–30 km/hで実際に走行する車両に対して、交差点から最大で320 m離れた地点までサブテラヘルツ帯広帯域信号伝送を伝送することに成功しました。本試験は、既開発の6G向けサブテラヘルツ帯広帯域移動伝送試験装置を使用しました。本装置は以下の特長を有しています。

     

    1. サブテラヘルツ帯(105GHz)において5G標準仕様で採用されているOFDMA方式に準拠した物理層信号を送信可能

    2. OFDMA方式におけるサブキャリア間隔を現行5Gの120 kHzから960 kHzへ拡張することで、5Gで利用されている最大チャネル帯域幅(400MHz)の2倍を超える920MHzの広帯域化を実現し、最大1.7 Gbpsの高速伝送を達成

    3. 広帯域化に伴う移動環境下で送信された信号を受信できる信号処理機能をソフトウェア無線技術より開発し、サブテラヘルツ帯においても安定した受信を実現

     

    伝送実験では、送信ビームの照射方向を変えた以下の2つの条件について評価を行いました。

    送信機を、試験対象である交差点・道路を望む建物内に高さ約5.8 mの位置に設置し、送信ビームを交差点中央からおよそ100 m離れた地点に向けて照射しました。その上で、受信機を搭載した車両を交差点中心からおよそ330 mの範囲で走行させ、伝送特性を測定しました。なお受信アンテナの高さは1.5 mです。同じ送信機設置位置において、送信ビームを交差点中心に向けて照射しました。その上で、受信機を搭載した車両を交差中心点から約330 mの範囲で走行させ、伝送特性を測定しました。送受信アンテナには、利得25 dBiの標準ホーンアンテナを使用しました。また、いずれの実験においても受信アンテナは常に水平面内で交差点方向を向くように設定しました。なお、送信ビームは移動する受信車両に追従させず、実験中を通じて固定方向に照射しています。本評価では、5G信号のブロック誤り率(BLER:Block Error Rate)を伝送特性の評価尺度として用いました。BLERが0.1以下の場合を通信可能な状態と判断しています。

     

    本評価において、送信ビームを交差点中心から約100 m離れた地点に照射した場合、交差点中央付近の一部を除き、交差点中央から最大200 mの範囲において安定した通信が可能であることが確認しました。また、通信可能エリアは最大320 m先まで広がることを確認しました。一方、送信ビームを交差点中心に向けて照射した場合には、交差点中心から道路上約70 m程度の範囲においてBLERが通信可能条件である0.1を下回ることを確認しました。これらの結果から、送信ビームの照射方向を調整することで、用途に応じた柔軟な通信カバーエリアの形成が可能であることが明らかになりました。特に、交差点手前の道路に向けて送信ビームを照射することで、車両が交差点へ進入する前の広い範囲において、高速・大容量通信を提供できることを確認しました。さらに、本実験では送信ビームを移動車両に追従させていないにもかかわらず、交差点前の道路上に広い通信エリアを形成できることを実証しました。このことから、交差点周辺で生成される高精度3次元地図情報や点群データなどの先読み認識情報を、走行車両に対して高速かつ大容量に伝送できる可能性が示されました。

     

    3. 波及効果、今後の展開

    本研究により、道路環境において、現状の5Gで利用されるチャネル帯域幅を超える広帯域信号をサブテラヘルツ帯で行う際、送信ビームを移動受信車両に正確に追従しなくとも、走行する車両に対し最大320 mまで高速・大容量通信が可能であることを実証しました。今回の成果は、交差点周辺の俯瞰映像、点群データ、高精度3次元地図情報など自動運転向けの大容量認識情報を5G標準仕様に準拠しながら高速に伝送できる可能性を示すものです。これにより、より安全・安心な交通社会の実現に向けた超高速無線通信インフラの研究開発が加速されることが期待されます。また、本研究成果は2026年度6月に実施されました電子情報通信学会短距離無線通信研究会において発表されました。

     

    詳しくは
    https://www.dco.cce.i.kyoto-u.ac.jp/ja/PL/PL_2026_05.html

    をご覧ください。

    情報提供