国立大学法人千葉大学
千葉大学大学院医学研究院 伊藤薫教授(理化学研究所生命医科学研究センター 客員主管研究員)、理化学研究所生命医科学研究センター 家城博隆研修生(研究当時)の研究グループは、日本人の冠動脈疾患(注1)発症に対する希少遺伝子変異(注2)の寄与を解明するため、機械学習を用いた全ゲノム解析に取り組みました。その結果、従来法では困難であった希少遺伝子変異の疾患リスク層別化の精度を大幅に向上させました。この成果は、個々の遺伝的特性に応じた精密な評価を可能にし、将来的な個別化予防や最適な医療戦略の実現につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年6月4日に、学術誌Circulation:Genomic and Precision Medicineで公開されました。
(論文はこちら:10.1161/CIRCGEN.125.005341)

図:冠動脈疾患全ゲノム解析の機械学習フレームワーク
■研究の背景
心筋梗塞などの冠動脈疾患は世界的にも主要死因の一つであり、その発症には生活習慣に加えて、50%以上の割合で遺伝的要因が関与していると推定されています(参考文献)。この疾患を未然に防ぐには「病気のなりやすさ」を正確に予測することが必要ですが、従来法では一人ひとりが持つ希少遺伝子変異がどう影響しているかまでは網羅的に解明されていませんでした。そこで本研究では、機械学習を活用して日本人の遺伝情報を詳しく調べ、これまで見落とされていた側面を捉えることで、将来の病気リスクをより高い精度で予測する新たな手法の確立を試みました。
■研究成果のポイント
1. 従来の解析手法の限界を突破し、59の関連遺伝子を特定した。これにより、脂質代謝のみならず、免疫機能や血小板機能など、多様なメカニズムが病気に関与していることが判明した。
2. 特定された希少遺伝子変異のデータを基に、個人の病気リスクを数値化する「希少変異スコア(RVS)」を新たに開発した(図右上)。RVSは疾患の有無を見分けるだけでなく、長期的な心血管疾患死も予測し、臨床現場での重症度予測に役立つ可能性が示唆された。
3. RVSと、現在主流である多遺伝子リスクスコア(注3)(PRS)を比較した結果、RVSがPRSでは捉えきれない独自の遺伝リスクを反映していることが分かった。さらに2つのスコアを組み合わせた「統合リスクスコア」を構築した結果、疾患の予測精度が大幅に向上することが実証された(図右下)。
■今後の展望
本研究成果により、これまで見落とされていた希少遺伝子変異に基づく個人の体質に合わせた高精度なリスク予測と、精密な個別化医療の基盤構築が可能となります。今後はマルチオミクス解析による、より包括的な疾患システムを明らかにしたいと思います。
■用語解説
注1)冠動脈疾患:心臓の筋肉に血液と酸素を送る血管(冠動脈)が動脈硬化などで狭くなったり、詰まったりする病気の総称。代表的なものに心筋梗塞や狭心症がある。
注2)希少遺伝子変異:人それぞれの遺伝情報(ゲノム)のわずかな違いで病気に結びつくものを「遺伝子変異」と呼ぶ。そのうち、ごくわずかの人が持つ珍しい遺伝子の違いを「希少遺伝子変異」と呼ぶ。
注3)多遺伝子リスクスコア:数万から数百万カ所に及ぶゲノム(遺伝情報)の個人差を足し合わせることで、その人が将来特定の病気になるリスクを数値化した指標。
■論文情報
タイトル: Machine Learning Reveals the Contribution of Rare Genetic Variants and Enhances Risk Prediction for Coronary Artery Disease in the Japanese Population
著者: Hirotaka Ieki, Sai Zhang, Satoshi Koyama, Martin Kjellberg, Hiroki Yoshida, Ryo Kurosawa, Hiroshi Matsunaga, Kazuo Miyazawa, Nobuyuki Enzan, Changhoon Kim, Jeong-Sun Seo, Koichiro Higasa, Kouichi Ozaki, Yoshihiro Onouchi, The Biobank Japan Project, Koichi Matsuda, Yoichiro Kamatani, Chikashi Terao, Fumihiko Matsuda, Michael Snyder, Issei Komuro, Kaoru Ito
雑誌名: Circulation: Genomic and Precision Medicine
DOI: 10.1161/CIRCGEN.125.005341
■参考文献
タイトル: Heritability of death from coronary heart disease: a 36-year follow-up of 20 966 Swedish twins
雑誌名: Journal of Internal Medicine
DOI: 10.1046/j.1365-2796.2002.01029.x.
■研究プロジェクトについて
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(PRIME)「性差・個人差の機構解明と予測技術の創出」研究開発領域における研究開発課題「静的・動的オミクス融合が駆動する循環器多因子疾患システムの解明と先制医療の実現」の支援により行われました。
企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ
千葉大学大学院医学研究院 伊藤薫教授(理化学研究所生命医科学研究センター 客員主管研究員)、理化学研究所生命医科学研究センター 家城博隆研修生(研究当時)の研究グループは、日本人の冠動脈疾患(注1)発症に対する希少遺伝子変異(注2)の寄与を解明するため、機械学習を用いた全ゲノム解析に取り組みました。その結果、従来法では困難であった希少遺伝子変異の疾患リスク層別化の精度を大幅に向上させました。この成果は、個々の遺伝的特性に応じた精密な評価を可能にし、将来的な個別化予防や最適な医療戦略の実現につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年6月4日に、学術誌Circulation:Genomic and Precision Medicineで公開されました。
(論文はこちら:10.1161/CIRCGEN.125.005341)

図:冠動脈疾患全ゲノム解析の機械学習フレームワーク
■研究の背景
心筋梗塞などの冠動脈疾患は世界的にも主要死因の一つであり、その発症には生活習慣に加えて、50%以上の割合で遺伝的要因が関与していると推定されています(参考文献)。この疾患を未然に防ぐには「病気のなりやすさ」を正確に予測することが必要ですが、従来法では一人ひとりが持つ希少遺伝子変異がどう影響しているかまでは網羅的に解明されていませんでした。そこで本研究では、機械学習を活用して日本人の遺伝情報を詳しく調べ、これまで見落とされていた側面を捉えることで、将来の病気リスクをより高い精度で予測する新たな手法の確立を試みました。
■研究成果のポイント
1. 従来の解析手法の限界を突破し、59の関連遺伝子を特定した。これにより、脂質代謝のみならず、免疫機能や血小板機能など、多様なメカニズムが病気に関与していることが判明した。
2. 特定された希少遺伝子変異のデータを基に、個人の病気リスクを数値化する「希少変異スコア(RVS)」を新たに開発した(図右上)。RVSは疾患の有無を見分けるだけでなく、長期的な心血管疾患死も予測し、臨床現場での重症度予測に役立つ可能性が示唆された。
3. RVSと、現在主流である多遺伝子リスクスコア(注3)(PRS)を比較した結果、RVSがPRSでは捉えきれない独自の遺伝リスクを反映していることが分かった。さらに2つのスコアを組み合わせた「統合リスクスコア」を構築した結果、疾患の予測精度が大幅に向上することが実証された(図右下)。
■今後の展望
本研究成果により、これまで見落とされていた希少遺伝子変異に基づく個人の体質に合わせた高精度なリスク予測と、精密な個別化医療の基盤構築が可能となります。今後はマルチオミクス解析による、より包括的な疾患システムを明らかにしたいと思います。
■用語解説
注1)冠動脈疾患:心臓の筋肉に血液と酸素を送る血管(冠動脈)が動脈硬化などで狭くなったり、詰まったりする病気の総称。代表的なものに心筋梗塞や狭心症がある。
注2)希少遺伝子変異:人それぞれの遺伝情報(ゲノム)のわずかな違いで病気に結びつくものを「遺伝子変異」と呼ぶ。そのうち、ごくわずかの人が持つ珍しい遺伝子の違いを「希少遺伝子変異」と呼ぶ。
注3)多遺伝子リスクスコア:数万から数百万カ所に及ぶゲノム(遺伝情報)の個人差を足し合わせることで、その人が将来特定の病気になるリスクを数値化した指標。
■論文情報
タイトル: Machine Learning Reveals the Contribution of Rare Genetic Variants and Enhances Risk Prediction for Coronary Artery Disease in the Japanese Population
著者: Hirotaka Ieki, Sai Zhang, Satoshi Koyama, Martin Kjellberg, Hiroki Yoshida, Ryo Kurosawa, Hiroshi Matsunaga, Kazuo Miyazawa, Nobuyuki Enzan, Changhoon Kim, Jeong-Sun Seo, Koichiro Higasa, Kouichi Ozaki, Yoshihiro Onouchi, The Biobank Japan Project, Koichi Matsuda, Yoichiro Kamatani, Chikashi Terao, Fumihiko Matsuda, Michael Snyder, Issei Komuro, Kaoru Ito
雑誌名: Circulation: Genomic and Precision Medicine
DOI: 10.1161/CIRCGEN.125.005341
■参考文献
タイトル: Heritability of death from coronary heart disease: a 36-year follow-up of 20 966 Swedish twins
雑誌名: Journal of Internal Medicine
DOI: 10.1046/j.1365-2796.2002.01029.x.
■研究プロジェクトについて
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(PRIME)「性差・個人差の機構解明と予測技術の創出」研究開発領域における研究開発課題「静的・動的オミクス融合が駆動する循環器多因子疾患システムの解明と先制医療の実現」の支援により行われました。
企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ

