初夏に吹く風の肌触りは掛け替えのない心地よさで、なんとなく心が引きしまっていく感じがしてうれしいものである。その風の肌触りをいち早く察したかやぶき屋根は、衣替えでもしたように、生き生きとしてくるのがよく分かる。
この季節、ようやく姿を整えた草木の葉の緑や花が咲き乱れ、虚空を背に明るくなったかやぶき屋根のきめに、はっきりと投影されて心の奥に濃くしみいる。こうした豊潤なかやぶき屋根の下で、農家の多様な土間は存在してきたはずである。
あのころ母の生家は平入りの構えで、大戸口にある大きな敷居をまたいで土間に踏み込んだとたんに、独特のにおいが体中をほわっと包んでしまうのが日常であった。それは畑や田んぼの土のに...
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